月の妹はアリュート族(アリューシャン列島やアラスカ、シベリア東端の先住民)の民話です。
ある意味「かぐや姫」の話の透明性と通じるものがありそうです。もっともこちらのヒロインは年老いて死にますが・・・
西欧の神話・民話とは異なり、この地域の話には明確な起承転結がわからないことがよくあります(笑)
しかし読み進めていくうちにどこまでも澄み切った世界が現れ、読む人の心に理屈抜きのせつなさが湧いて来ます。
もしかしたら自分はこの世に生まれてくる必要もなかったかもしれない、そんな気にさせてくれる不思議な世界を作り出しています。
「月の妹は、大人になるとルピナスの根を食べるのが好きになった。
ある時、彼女はルピナスの根を掘りに行き、一本の根を地面から引き抜いた。
すると引き抜いた穴から冷たい風が吹いてきた。
そこでその穴をのぞいてみると、下の方に村々があるのが見えた。
~アリュート族の神話・伝承(アリュート族はベーリング海沿岸、アリューシャン列島、カムチャツカ,の先住民)荻原眞子 "東北アジアの神話・伝説"」
古代世界の女性の象徴として表す、やさしさ、哀しさ、美しさに彩られた夢幻だけど妙にリアリティのある世界です。
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