青森県の津軽半島の良港十三(とさ)湊(みなと)には、交易を求めて北方世界のさまざまな民族が集まってくる。
領主の安藤氏はたいへんな威勢があり、アイヌ民族がサハリンや大陸で元と戦ったことに影響したほどであった。
その領主が春の暖かな日、自らの舘に各民族の人々を集めて宴をもよおす。このときばかりは交易の駆け引きや民族間の対立は忘れ去られる。
人々がかすかな海風を感じながら談笑する宴席で、女たちは底抜けに明るく踊り始める。北の島や西の大陸から、南の国々からやってきた踊り手たちは、自らの部族を代表して競い合って踊る。
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十三湊は津軽半島の五所川原駅からクルマで一時間ぐらいのところに位置する(旧市浦村)。
十三湖(じゅうさんこ)という湖が川で日本海とつながっており、たくさんの船が行き来していたことであろう。
舘の跡地にある土塁の上をおだやかな陽射し感じて歩いていくと、往時の街並みの家々がひっそりと現れる。
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